AGVとAMRとは?自律移動ロボット(AMR)の仕組みと特徴を解説
AGVとAMRとは?自律移動ロボット(AMR)の仕組みと特徴を解説
AGV(無人搬送車)とAMR(自律移動ロボット)は、どちらも工場や研究現場で活用される自動搬送ロボットです。
しかし、走行の仕組みや柔軟性、導入方法には大きな違いがあります。
本記事では、AMRとは何かという基本から、自律移動ロボットの仕組み、AGVとの違い、導入時のポイントまでをわかりやすく解説します。
経済産業省・厚生労働省・文部科学省が発行する「2025年版ものづくり白書」 (令和7年5月)では、製造業における人手不足が継続的な課題として指摘されており、 自動化への投資ニーズは年々高まっています(※1)。
市場調査会社Mordor Intelligenceによると、自律移動ロボット(AMR)の世界市場規模は 2025年時点で約44.9億米ドルと推定され、2030年には約92.6億米ドルへ拡大する見込みです (CAGR 15.6%)(※2)。
日本国内でも、製造業・物流業における人手不足対策や研究開発分野での活用ニーズを 背景に、AGVからAMRへの移行や併用導入が進んでいます。
AGV(無人搬送車)とAMR(自律移動ロボット)の基礎知識
AGV(無人搬送車)とは
AGVの主な誘導方式
AGVには、走行ルートを決めるための「誘導方式」がいくつかあります。代表的な4つを紹介します。
1.磁気テープ誘導式
床に貼った磁気テープをセンサーで読み取り走行します。最もシンプルな方式です。
メリットは導入コストの低さ、デメリットはテープの摩耗に弱いことです。小〜中規模の工場や倉庫で広く使われています。
2.電磁誘導式AGV
床に埋め込んだ電線から出る磁場を検知して走行します。
初期コストは高めですが、耐久性に優れます。長期運用を重視する現場に向いています。
3.レーザー誘導式AGV
天井や壁に設置した反射板に向けてレーザーを発射し、位置を測定します。
床面工事が不要で、広い空間での高精度走行が可能です。倉庫や物流センターで採用されています。
4.QRコード誘導式AGV
床に貼ったQRコードをカメラで読み取って走行します。
磁気テープよりルート変更が容易で、Amazonなど大規模倉庫で使われています。
AGVの搬送能力
搬送できる重量は機種によって大きく異なります。用途別の目安は以下の通りです。
・軽量搬送用:数十kg(部品・書類など)
・中型搬送用:数百kg(パレット単位の荷物)
・大型搬送用:1〜数トン(大型貨物・自動車部品など)
AMR(自律移動ロボット)とは
AMRとは、センサーやソフトウェアを活用して自律的に移動する自律走行ロボットのことです。
LiDARやカメラなどで周囲環境を認識し、SLAM(自己位置推定)によって地図を作成しながら最適な経路を判断します。
このようにAMRは、従来の自動搬送ロボットよりも柔軟な運用が可能です。
AMRの主要な構成要素
AMRを構成する4つの主要パーツ
AMRは、以下の4つの要素が連携して自律走行を実現しています。
1.センサー類(周囲を認識する装置)
2.駆動系(走行する仕組み)
3.制御コンピュータ(頭脳にあたる部分)
4.バッテリー(電源)
それぞれ順に解説します。
1.センサー類|AMRの「目」と「耳」
AMRには複数のセンサーが搭載されています。主なものを表にまとめました。
| センサー名 | 役割 | 用途 |
|---|---|---|
| 2D/3D LiDAR | 距離を正確に測る | 自己位置推定、障害物検知 |
| 深度カメラ | 色+距離を取得 | 人や物の識別 |
| IMU(慣性計測装置) | 傾きと動きを検知 | 姿勢制御、安定走行 |
| 超音波センサー | 近距離の物体検知 | 接触防止、バンパー機能 |
※LiDAR(ライダー)とは、レーザー光で距離を測るセンサーのことです。
2.駆動系 AMRの「足」
用途に応じて、3種類の駆動方式が使い分けられます。
・差動二輪駆動:シンプルで制御しやすく、最も一般的
・メカナムホイール:全方向へ移動可能。狭い場所に強い
・オムニホイール:回転せずに横移動できる
3.制御コンピュータ AMRの「頭脳」
内部には小型PCが搭載されており、以下のような製品がよく使われます。
・Intel NUC(コンパクトな高性能PC)
・NVIDIA Jetson(AI処理が得意な組込ボード)
・Raspberry Pi(低コストな小型PC)
ソフトウェアは、ロボット開発で広く使われるROS/ROS2が主流です。
4.バッテリー AMRの「電源」
現在はリチウムイオンバッテリーが主流です。稼働時間の目安は以下の通りです。
・小型AMR:4〜8時間
・中型AMR:8〜12時間
多くの機種は、残量が少なくなると自動で充電ステーションに戻る機能を備えています
SLAM(自己位置推定と地図作成)の仕組み
SLAMとは?自律走行を支える中核技術
AMRが自分で地図を作り、自分の位置を把握できるのはSLAM(スラム)という技術のおかげです。
SLAMは「Simultaneous Localization and Mapping」の略で、日本語では「自己位置推定と地図作成の同時実行」と訳されます。
難しい名前ですが、やっていることはシンプルです。
・自分の周りを見回して(センシング)
・環境の地図を作りながら(マッピング)
・同時に自分の位置を把握する(自己位置推定)
SLAMの3つの主要タイプ
使うセンサーの種類によって、SLAMには主に3つのタイプがあります。
1.LiDAR SLAM
LiDARの距離データを使って地図を作る方式です。
・特徴:高精度で安定性が高い
・採用例:産業用AMRの主流
・代表アルゴリズム:Cartographer、SLAM Toolbox
2.Visual SLAM(V-SLAM)
カメラ映像から地図を作る方式です。
・特徴:ハードウェアコストが低い
・弱点:暗所や光の変化に弱い
・代表アルゴリズム:ORB-SLAM、RTAB-Map
3.Visual-Inertial SLAM(VI-SLAM)
カメラとIMU(姿勢センサー)を組み合わせた方式です。
・特徴:カメラの弱点をIMUで補える
・採用例:ドローンや小型ロボット
・代表アルゴリズム:VINS-Fusion、OpenVINS
地図ができた後はどう動く?
地図が完成すると、AMRは経路計画アルゴリズムを使って目的地までのルートを決めます。
経路計画には2つの段階があります。
1.大域的経路計画:出発点から目的地までの全体ルートを決定(例:A*、Dijkstra)
2.局所的経路計画:障害物を回避しながら細かく調整(例:DWA、TEB)
ROS 2では、これらをまとめたNav2というナビゲーション機能が標準的に使われています。
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AGVとAMRの違いを比較|仕組み・柔軟性・導入コスト
AGVとAMRの違いを、主要なポイントごとに整理します。
| 項目 | AGV | AMR |
|---|---|---|
| 走行方式 | ガイド(磁気テープなど) | 自律走行(SLAM) |
| 柔軟性 | 低い | 高い |
| レイアウト変更 | 困難(再施工が必要) | 容易(マップ更新) |
| 初期コスト | 比較的低い | やや高い |
| 安全性 | 停止中心 | 回避行動が可能 |
| 研究用途 | △ | ◎ |
・走行方式の違い(固定ルート vs 自律走行)
AGVは固定ルートを走行するのに対し、AMR(自律移動ロボット)は環境を認識しながら自律走行します。
・レイアウト変更への対応力
AGVはラインの引き直しが必要ですが、AMRはマップ更新のみで対応できるため、環境変化に強い自律走行ロボットです。
・導入・運用コストの違い
AGVは初期費用が抑えやすい一方で、レイアウト変更時に追加コストが発生します。
AMRは初期コストはやや高めですが、長期的には柔軟性の高さがメリットとなります。
・安全性と人との共存
AMRはセンサーにより人や障害物を検知し、減速や回避行動を行うことが可能です。
そのため、人と同じ空間での運用に適しています。
どちらを選ぶべき?用途別の選定ポイント
用途によって適したロボットは異なります。
・工場・倉庫など定型搬送 → AGVが向いている
決まったルートを繰り返し走行する環境では、AGVが安定した運用を実現します。
・研究開発・実証実験 → AMRが向いている
環境や条件が変化する研究開発では、柔軟に対応できるAMRが適しています。
・人と協働する環境 → AMRが有利
人とロボットが同じ空間で動く場合、安全性や回避能力を持つAMRが有効です。
研究用途でAMRが選ばれる理由
研究開発の現場では、AMRが多く採用されています。その理由は以下の通りです。
・カスタマイズ性が高い
センサー構成や制御システムを柔軟に変更できるため、研究テーマに合わせた構築が可能です。
・ROS/ROS2対応で開発しやすい
ロボット開発で広く使われているROS/ROS2に対応しているため、アルゴリズム開発や実験がスムーズに行えます。
・実験・検証環境に適している
自律走行や人とのインタラクションなど、多様な実験に対応できるプラットフォームとして活用されています。
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上記のようなAMRのメリットを実現するには、用途に合わせた ハードウェアのカスタマイズが重要です。ヴイストンの プロトロボでは、以下のような対応が可能です:
- 9種類のベース機種から選べる(積載量・サイズ別)
- LiDAR、カメラ等のセンサー追加に対応
- 1台からの試作対応、短納期で納品
- NDA対応・機密保護体制あり
AMR導入前に知っておきたい注意点
AMRは高機能ですが、導入時にはいくつかのポイントに注意が必要です。
・初期設定や環境構築が必要
マップ作成やパラメータ調整など、導入初期に一定の設定作業が発生します。
・センサーや環境の影響を受ける
LiDARやカメラの性能、環境条件によって精度が変わるため、用途に応じた設計が重要です。
・用途に合った機体選定が重要
搬送重量やサイズ、研究目的に応じて適切なロボットを選ぶ必要があります。
まとめ|柔軟性と拡張性を重視するならAMR
AGVはシンプルで安定した搬送に適している一方、
AMRは柔軟性・拡張性に優れ、研究開発や変化の多い環境に適しています。
特に、研究用途や実証実験においては、カスタマイズ性や開発のしやすさからAMRが有力な選択肢となります。
研究用途AMRの開発・カスタマイズをご検討の方へ
研究用途AMR(自律移動ロボット)の開発やカスタマイズをご検討の方は、以下のページをご覧ください。
ROS対応やセンサー構成の変更など、研究内容に応じた柔軟な対応が可能です。
【出典・参考文献】
※1 経済産業省・厚生労働省・文部科学省「2025年版ものづくり白書」(2025年5月) https://www.meti.go.jp/report/whitepaper/mono/2025/index.html
※2 Mordor Intelligence「自律移動ロボット(AMR)市場 – シェア、規模、分析、 動向と予測(2025-2030)」 https://www.gii.co.jp/report/moi1687349-autonomous-mobile-robot-amr-market-share-analysis.html
